中小企業診断士の知名度はいかほど?現役診断士の目線で考えてみる。

 中小企業診断士は「経営コンサルタントの国家資格」として知られているわけですが、実は知名度はまだまだ低いのではないか?という話もよく聞くところです。実際日経転職版の「取得したい資格ランキング」でトップを飾ったり、各種経済誌の資格特集でも特集の中心的な立ち位置を担うこともあることから、全く知名度がない、とまではいえないでしょう。

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 とはいえ、「中小企業経営者には知られていない」という意見もあるところです。

  それが本当なのか、また、どういった面で評価されるのかをまとめてみようと思います。

・ポイント

  • 小規模事業者や中小企業経営者からの認知度は案外低い。肩透かしな面も
  • 大企業や行政・公的機関には高い信用力がある資格

中小企業診断士といえど・・・

 私は令和2年に資格を取得しました。令和3年に登録し、1年間窓口支援を行なっていましたが、その時の所感で言うと、中小企業の経営者の多くはこの資格を認知していない/関心を持っていないと感じました。

 せっかく支援者となれる資格ではあるのですが、「中小企業診断士?」といった反応の事業者の方も多かったので「聞いてはいたけどやっぱりそんな反応なんだな…」と思ったものです。

 では、なぜ知られていないのか、少し考えてみると次のような事情が推測されます。

  • 資格名を知らない
    弁護士や税理士ほどメジャーではなく、「中小企業診断士」と言ってもピンとこない場合が多い。
  • ミスマッチなイメージ
    「コンサルタント」への苦手感、忌避感。
  • 課題を解決してくれるのであれば誰でも良い(資格にはこだわっていない)
    資金繰りや人手不足など切実な課題ばかりなので、「資格より実務経験」を求める傾向が強い。そもそも自分の問題や悩みを解決してくれるならば社長にとってそれは「中小企業診断士」である必要はないの。

 こういった点からなかなか認知度が低い、という現実はあるのかなと思います。近年は補助金が増えてきたことから中小企業診断士の役割も拡大してきており、以前と比べると知名度もあがっているようには思いますが、やはりまだまだ。また、創業など中小企業診断士にお世話になったと言う人でも「診断士の先生」というよりは「コンサルの〇〇さん」「××社の▲▲さん」と認識して関わっている人も多いのかな、と思います。

 もっとも商工会議所や商工会の活動に取り組んでいる経営者だと、中小企業診断士に対する評価がすごく高い、という方もいらっしゃるように思います。肌感ですが10~20人に一人くらいは「おー」と反応してくださるイメージです。

評価される場面〜大企業編〜

 では中小企業に知られていないならば、大企業ではどうでしょうか?

 少なくとも自分の取得時を思い返すと、最も評価してくれたのは大企業勤めの友人・知人たちであったように思います。様々な会社で「難関国家資格」として扱われていたりすることから評価が高いという面はあるように思います。

 私は支援機関への転職後の取得のため、直接的な評価がどうなのか、というのは分かりかねますが、前職で中小企業診断士を保有していた人たちの処遇をみる限り、やはり社内での信用力を高める効果はあるのだな、と思わされます。諸々の媒体で書かれている通り、昇進や採用でアピールしやすい面はあるのではないでしょうか。

 あまりプロフィールを書き込んでおらず、営業職ばかりしか求人が来なかった転職サイトでも経営企画部門やコンサル系の求人が来出したのも資格取得後からでした。

 そういった面からも対大企業という点で、資格取得でキャリアが開ける可能性は十分にあるのではないでしょうか?

評価される場面〜金融機関・公的支援機関編〜

 さて、そんな中、最も中小企業診断士を評価してくれるのは誰か、というと金融機関や公的支援機関ではないかな?と私は考えています

 これら二つに共通するのはキャリアパスの一つとして中小企業診断士の取得が推奨されている、という点があります。

 このため、働きながら中小企業診断士の取得に取り組んでいる/取り組んだことのある職員が多く在籍しています。そういったこともあって、知名度があるのはもちろん、一定程度のリスペクトを持って接してもらうことができます。

 例えば金融業界の業界誌ともいえる「ニッキン」によれば中小企業診断士を受験する金融機関職員は年間2,000人にのぼるともいわれています。

Nikkin金融講座 銀行員の仕事に役立つ資格(3)中小企業診断士/企業経営アドバイザー | ニッキンONLINE
金融機関は、取引先企業の事業の実態を深く理解したうえで融資や本業支援に取り組み、事業者のニーズや課題

(ニッキン:Nikkin金融講座 銀行員の仕事に役立つ資格(3)中小企業診断士/企業経営アドバイザーより)

 また、金融検査マニュアル(別冊 平成27年1月版)13ページによると、「金融機関が企業・事業再生に向けた積極的・組織的な取組み、例えば、継続的な企業訪問、中小企業診断士等の専門性を有する者の養成、企業・事業再生支援のための経営相談や経営指導、再生支援チームによる再生計画の策定等を実施していること。 」とされており、金融機関への中小企業診断士養成を促す文言があります。

 金融検査マニュアル自体はすでに廃止されていますが、金融庁の姿勢が事業性評価融資に移行してきた現在、明言はしておらずとも、金融機関側から中小企業の事業の先を読み判断できる役割を担える職員を育てねばならないことを考えると中小企業診断士の重要性は未だ下がっておらず、むしろ上昇しているとも思われます。

https://x.gd/a7qwN

(金融庁:金融検査マニュアル 別冊 平成27年1月版 ※URL短縮済み)

 あくまで人伝に聞いた話ですので話半分で聞いてほしいところですが、ある金融機関では中小企業診断士試験の合格者に100万円〜200万円ラインの報奨金を準備しているとか・・・。なかなかすごいですね。

 なお、私も規程内では最大幅の特別昇給がありました。雀の涙ですが、ちゃんとベースが上がっているので何もなかったり時限の手当てよりはマシかあ、という感じです。

 さて、金融機関や公的支援機関と中小企業診断士の関係を考える時には、彼らがその立場上、様々なコンサルタントに接してきているという点も無視できません。

 世の中様々なコンサルタントがいます。良い意味でも悪い意味でもですが、世の中に業界が様々にある以上、コンサルタントの種類も星の数ほどあるといってもよいでしょう(実際、農業や環境、建築系などは特殊性が強いですよね。事業者さんにとっては業界専門のコンサルの方が言葉が通じて頼りになる場面も多いかと思います)。

 しかし、中小企業支援という文脈である程度しっかりと言葉が通じると言う点で中小企業診断士ほど「話がはやい」存在はないのかなと思います。やはり仕事を頼むのであれば、基本的な用語が通じやすかったり、各種制度への理解がしっかりとできているコンサルタントの方がコミュニケーションがとりやすいものです。

 また、公的支援機関の職員は専門家を派遣したり、専門家を呼んでセミナーを企画する必要があります。こういった事業は国や自治体からお金が出て運営できているわけであり、専門家の選定をする際には、専門家の選定理由を記載する必要があることが多くあります。

 私も実際に書く機会がありますが、中小企業診断士をはじめとして国家資格の有資格者ほど選定理由を書きやすいものはありません。

 こういった点もあり、金融機関や公的支援機関の中小企業診断士に対する評価は概ね「高い」と言って良いでしょう。経営者からの中小企業診断士の知名度が低い、といえど、その中小企業・小規模事業者とつないでくれる金融機関・公的支援機関からの知名度・信用が高い点はけっこうなメリットであると言えます。

(もっとも、あくまでそれは入口段階のお話です。お付き合いをはじめてからはやはりその人次第、ですね。逆に支援機関側もなかなかお金が出せなかったりとしますから、せっかく仲良くなった先生方から見限られないように頑張りたいものですね。)

評価される場面〜他士業編〜

 さて、最後に他士業というところを挙げてみましょう。

 意外と他士業の評価というのは大切なものです。弁護士も税理士も司法書士も社労士も行政書士その他士業はやはり企業との関わりが多い立ち位置ですから、お互い仕事を紹介し合いながら取り組んでいる面はあります。

 ということですので、他士業からの評価はどうなのか。

 これはサラリーマンの身では量りかねているところがあります。

 私は前職で士業の先生方との関わりが多くあったので資格取得前からこの資格の評価を聞いていたのですが、かなり千差万別です。

 「基礎知識がしっかりしていて話が通じる」、「自分も今の資格に足そうと思ったが諦めた」「〇〇先生とか頼りになるよね」、そういう声も聞きますし、「仕事を邪魔されたことがある」「半端な知識で余計な入れ知恵をしてくる奴ら」などとなかなかな声も聞いたことがあります(半端な知識というのは耳が痛いんですよね実際)。

 正直、こう聞くと最後はその人次第、という面は否めないのかなあと思います。

 ただ、ダブルライセンスを目指して断念された、という先生もけっこう多いので、その面で高評価をしてくださったり、取得したことで目にかけてくれる先生は多かったという印象です。

 自分なりの色を発揮して、求められる役割をこなしていく。士業どうしというのはやはり民民どうしで協業する相手ですから気持ちよく相手を裏切らない仕事ぶりがもっとも大切なのかもしれませんね。

まとめ

 「中小企業診断士」は、中小企業経営者には認知度が低めな一方で、大企業では難関資格として評価を得られる場合があり、また、金融機関・公的支援機関からは認知度が高く高評価を得られるケースが多くあります。知名度が低いと言えど、高く評価される場面も多くありますので、結局は自分が生かしたい場面・フィールドに合うか、ということが大事になってくるのではないでしょうか。

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