企業診断4月号(特集:生成AIの導入支援)を読んで

 とりあえず、何を書くか、というところでまずは手元にあった企業診断の特集を読んでの感想でも書いてみようと思います。

 私の勤め先でも生成 AI をどうにかして業務に活用していきたい、という話はしていまして、実際その導入や実験は色々とやっているところです。生成AI自体の進化速度がとにかく速いことと、低価格化が進んだことで中堅・中小企業にとっての生成AIはこの1〜2年でかなり身近になってくると感じています。

 ただ、やはり「いうほど簡単ではないよね」というところもあるわけで、その点、生の導入支援事例を取り扱っている当記事は面白いものでした。私自身大いに共感する部分があったところです。

 特に「暗黙知の顕在化」「データ品質」「カルチャー変革」という三つの“見えにくい壁”を丁寧に整理している点に感銘を受けました。これらは生成AIを導入する現場で必ず直面する課題であり、本誌の提案は実務への即効性が高いと感じました。


1 中小企業における生成AI導入の課題

 中小企業における生成AI導入の課題として本稿では6点挙げられています。ただ6つとなるとなかなか大変なので、「導入・活用」という面に絞ると下記の3つが特に大きいように思われます。

課題どんな問題?なぜ起こる?
① 限られた資金・人材
(経営資源の制限)
高性能な AI モデルやデータ整備には費用も専門スキルも必要だが、中小企業では調達困難。・IT 予算が少なく、実装が困難
・AI やシステムの実装に詳しい職員を社内に抱えられない
② 「暗黙知」の偏在
 データ品質の低さ
職人の勘や紙ベース資料など、AI が学習できる形で整理されていない情報が多い。さらに表記ゆれ・重複・欠損が散在し、モデル精度を下げる・業務プロセスが文書化されていない。職人芸的なレッジ。
・データ入力が属人的でフォーマットがばらばら。
③ 社内カルチャーへの影響と抵抗感「AI に仕事を奪われるのでは」という不安から導入が進まない、またはベンダー任せで自社にノウハウが残らない。・トップダウンだけでは現場が動かない。
・AI の仕組みがブラックボックスに見えて怖い。

 ①経営資源の制約というのはかなり大きな問題です。AI自体が安くなってきているとはいえ、選択肢が増えているのも事実です。さらに自社にとって使いやすいAIツールをどう選び、どれだけ調達するか、というのも判断には悩まされるもの。

 そして、その活用自走できるように持っていけるようにするうえで、社内人材の活用は必要不可欠。しかし、内部の人材を既存業務を抱えたままそういった業務に当たらせるのはなかなか厳しいものもあります。

 ②の暗黙知やデータ品質の問題もあります。
 そもそも、中小企業においては、そのデータを何か別のものに変換して利用する、という経験に乏しいことが多いものです。実際、ベンダー側の考えとして、確かに会計ソフトや給与ソフト・販売管理ソフトなどは、そのシステムから出る帳票である程度完結できるようにさまざまな集計機能や帳票出力機能を搭載しています。その中から、自社の日常業務にとって使えそうな帳票にうまくデータが載ってくれば良いわけですから、普段の入力でも、そこに出てこないデータまでは熱心に入力しませんし(そんなことをやっていると仕事の負荷も増えるわけで)データの抜け漏れが出ることは理解できるものです。
 現場部門であればなおのことでしょう。そういった点を踏まえながらの対処というのはある意味では企業規模を問わず課題になってくるのではないでしょうか。

 そして③社内カルチャーへの影響と抵抗感。これは必ずあります。いろいろな部門・職種の人がいる以上、利害関係は大きい。絶対に発生します。そして厄介な

2 視点

 さて、こういった課題に対してどのように対処していくかを筆者はまとめていますが、私なりに面白かった部分をまとめていきたいと思います。

(1)ユースケースの設定

 当たり前と言えば当たり前なのですが、いくら生成AIがすごい、と言えど、自社の業務フローで使えないと意味がありません。私は自社の中で内部の人間として生成AI実装に取り組んでいるので自社の業務フローへ理解もある前提で今のところ取り組めていますが、外から関わるとなるとやはり丁寧なヒアリングなしにツールだけ導入してもうまくいかないなと感じるものがあります。
 補助金で○○の機械を導入する、というときも、業務フローを丁寧に棚卸して、どういう現場の課題の解決に、ひいては経営の課題の解決につながるか、というヒアリングは必要ですが、AIに関してもそれは同じで、その会社の業務フローとその課題に関する理解は必要不可欠と言って良いでしょう。
 改めて言うようなものではないかもしれませんが、基礎的な心得としてやはり大事だなと感じさせられました。

(2)使いやすさ重視

 私がこのブログを書きたいと思ったきっかけとして、AIツールのDifyにハマり、これに関する記事を書いてみたいと思ったのが大きなきっかけの一つです。

 

 Difyが中小企業のAI活用でひとつ「良いな」と思っているのが、プロンプトをあらかじめ埋め込んだAIツールを社内に提供できる、という点です。

 考えてもみれば誰しも普段の日常業務を抱えているわけで、仮にその仕事のレベルアップには熱心であったとしても、別にAIのレベルアップをしたいわけではないわけです。
 となると、AIツールに限らず、ITツールというのは極論、「何も考えずに使える」形に持っていくのがベストではないか?と考えています
 ですので、「専門知識が少ない社員が使える」「シンプルで直感的なUI」というのはAI・IT大好きな人間だからこそ、導入支援に当たっては見落としてはいけないところなのではないでしょうか?

(3)データクリーニングの視点

 データの課題については先にも挙がったところですが、このデータクリーニングはなかなかに骨の折れるな作業です。データクリーニングは前処理8割、という世界観なのは百も承知なのですが、それこそ日常業務をたくさん抱えながら社内に散らばっているデータを収集し、整形し、欠損値や異常値を整えて・・・という作業はなかなかに負荷がかかります。
 私は、マナビDXQuestでの学習やGoogle Data Analytics Professional Certificateなどでちょこちょことデータ分析をやったのですが・・・とにかく手間がかかり、また正解の見えにくい作業であった印象です。たまに面白い洞察が降りてくるのにやりがいもなくはないのですが。
 そんな中、さまざまな無料、安価なツールの提案がされており、なかなかに勉強になりました。
 ただ、これはここのまとめに書くのは重すぎるのでそれぞれしっかりと調べて別記事にしてみようと思います。

(4)セキュリティの視点

 これもまた、別枠で書きたいと思います。
 セキュリティの問題は厳密さを突き詰めれば、課題はいくらでもあります。予算も莫大でしょう。
 しかし、その対策を全てとっていくのが正解と限らないのもセキュリティの悩ましいところでしょうか。中小企業における生成AIセキュリティの分水嶺がどこなのか、という点は個人的な研究課題でもあります。また少しずつ探求していきたいところです。

(5)文化的なハードルを乗り越える!

 AIに限らずシステム導入の話をしていると課題になりやすいものの一つはここです。

 やはり人間、本能的なものか「自分の場所が奪われるかも」「新しいことをやらないといけない」ということには抵抗の方が先に出てしまうものなのでしょう。それが特に人からの押し付けれあればなおのことです。そういった中で、

・ビジョンと目的の明確化

・心理的障壁減の社内教育とスキル教育支援

・キャリアの不透明感を払拭し新役割の明示

という3点がポイントとしてまとめられています。

 経営者としてどうしたい、ということを従業員としっかりと共有していくことの大切さはこうった分野でも不可欠ですし、新しいものだからこそ組織的に不安の軽減を図る手を打つ、というのはやはり大切だと思われされたところです。


3 まとめ

  • 生成 AI は中小企業でも使える武器になってきている
    低価格化とツールの多様化で、中小企業でも十分手が届く段階に来た。
  • 最大の壁は“人とデータ”
    ①資金・人材、②暗黙知とデータ品質、③カルチャー抵抗――この三つをどうほぐすかが勝負どころ。
  • 突破口は“スモールスタート+小さな成功体験”
    無料トライアルで PoC → 成功例を社内に共有 → モチベーションと予算を同時に確保、が鉄板ルート。
  • 暗黙知はワークショップで掘り起こし、データは無料ツールで磨く
    ベテランの勘を言語化し、OpenRefine などでデータクリーニングを進める
  • まずは身近な業務で
    問い合わせメールの下書き、マニュアル要約など“3日で効果が見える”ところから着手し、半年で社内に定着を。

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